広島地方裁判所庄原支部 昭和40年(わ)20号 判決 1967年11月27日
主文
被告人を懲役一〇月に処する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は自動車運転業務に従事している者であるが、
第一、昭和四〇年九月一八日午前一一時五〇分ごろ、大一そ一六一九号トヨペツトダイナー四〇年型小型四輪貨物自動車を運転し、庄原市春田町一七九ノ一中田文造方附近の巾員二・五〇米の狭隘なる県道を双三郡三良坂町方面に向け進行中、前方を同一方向に向け歩行している穂崎稔(昭和三三年一〇月一〇日生)外四名の児童を発見し同人等を追い抜こうとしたが、このような場合自動車運転者としては、前記のように狭い道路であるから右児童等を安全なる場所に避譲させかつ同人等の行動姿勢を常時注視しつつ同人等との間隔を充分保持して通過し危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるにも拘わらず、不注意にもこれを怠り右児童等が同町一八四番地先道路左側に一列に並んで呉れたので、無事通過できるものと軽信し、時速約七ないし一〇粁で右児童等の右側約一五糎のところを通過しようとした過失のため、自車の左側車巾燈に穂崎稔を接触させて路上に転倒させ同人の腹部等を左後車輪でひき、よつて同人に対し肝臓等の腹部内臓破裂等の傷害を負わせた結果即時同所において死に至らしめ、
第二、前記日時場所において、被害者穂崎稔をひき傷害を与えこれを未必的に感知したのに、直ちに車輛の運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を何ら講ぜず、
第三、右の場合、直ちにもよりの警察署の警察官に当該事故が発生した日時場所当該交通事故における死傷者の数及び負傷の程度等所定の報告をしなかつた
ものである。
(証拠)(省略)
(法令の適用)
判示第一の所為は刑法二一一条、罰金等臨時措置法三条に、判示第二の所為は道路交通法七二条一項前段、一一七条に、判示第三の所為は同法七二条一項後段、一一九条一項一〇号に各該当するので、いずれも所定刑中自由刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第二の罪の刑に併合罪加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法一八一条一項本文を適用し、主文のとおり判決する。